地図編集、地図デザインとは
1)地図編集
地図はとても広い大地を小さな紙切れに描き表せなければなりません。その地表には、起伏があり、水部があり、植生があります。そして、その上には人が作り出した農地や建物、交通路といった構造物があります。さらにそれらには名称がついています。目に見えるものだけではなく、人々を管轄する範囲である行政地が存在し、目に見えないラインが設定されており、地名が付けられています。このように、広い大地には地表に現れているものから、見えないものまで、無限の要素があるのです。それのすべてを小さな紙切れに描くことは絶対に不可能です。そこで、何を地図に載せるかを判断、選択しなくてはなりません。
判断の要素として、1縮尺(大きさ)、2作成地域の範囲、3作成地域の規模、4地図の使用用途、5使用対象者によって載せる判断基準を設定します。その基準をもとに投影法決め、図取(地図の寸法と掲載範囲の決定)をし、1〜5に見合った文字、記号、線、図形など入れる要素と量を決定します。
これらを決めておくことを編集基準といいます。しかし、基準に当てはまらないがどうしても採用したい事項、基準要素が集中してしまう事項(例えば、人口10万人以上の市を採用とした場合、首都圏や京阪神では地図上に入れられない可能性がありますよね)など、イレギュラーな事が必ず起こります。あくまでも参考基準とし、編集基準に縛られすぎないようにすることも大切です。
次に掲載物のカテゴリーごとに図式(文字、記号、線、図形の色、大きさ、太さ、種類)を決めます。
さらに、使用用途に応じて掲載する要素の格付けをします。つまり重要度を設定します。地名であればフォントの大きさ、太さで差をつけます。線であれば太さ、色、形状で重要なものを目立つようにします。
2)総描
広い大地に展開する状態を測量し地図に描き表したものを測量図といいますが、縮尺が小さくなる(分母の数字は大きくなります)ほど測量成果を描き表すことが困難になります。また、地図の使用用途によっては測量成果を完全に無視をして地図を大きく変形させることもあります。
小縮尺の地図を使いやすく、見やすくするためには、大縮尺の地図をそのまま縮めて使用することはできません。文字は小さくて見えなくなり、線も細すぎて印刷に耐えられない、図形もゴミのように見えてしまいます。そうかといって文字の大きさ、線の太さを変えずに縮小すると隣接する文字や線同士が重なり合ってごちゃごちゃになり読図が困難、というよりも不可能になります。そこで、縮尺や使用用途に応じて地図を改変しなければなりません。それを総描といいます。
総描するためには、地表の特徴を損なわないようにしながら、改変しなければならず、地理学と地図作図の経験が豊富にないと難しい作業になります。よく言われるきれいな地図ときたない地図の差は、地図作成における総描力の差だといっても間違いはないと思います。
さて総描には、①省略化、②簡略化、③統合化、④転位という技法を用いて地図を見やすくします。さらに、使用用途に応じて⑤誇張化もする場合があります。
①省略化について
地図編集で述べた判断と選択ということになります。載せる要素の取捨選択をすることです。それは地名や交通線だけではなく、河川や湖沼、島なども縮尺や使用用途に応じて省かなければなりません。そこで何を省くか、それを判断することが地図編集なのです。
使用用途や縮尺、可読性を考慮し省く地物を選定していきますが、自らが設定した編集基準に該当しないものも採用しなくてはならない場合があります。例えば、採用の島を面積で設定します。そうすると、沖ノ鳥島や竹島、尖閣諸島など日本の国土を示す上で重要な島が削除されてしまうということが起こってしまいます。ですので、編集基準に縛られず、重要と思われるもの、地図のバランス的に入れておきたいものは採用しなければなりません。
②簡略化について
特に自然の形状は複雑で細かいものです。地図を縮めるとそう形状が災い、地図が汚く見えてしまいます。例えば河川の蛇行。そのまま縮小すると河川路がくっついてしまいます。そこで、正確な流路ではなく、見やすいように屈曲の形状を単純化して見やすくするのです。しかし、穿入蛇行が特徴の河川をまっすぐに簡略化してしまっては本末転倒です。あくまでも特徴を損なわないように簡略化するテクニックが必要となります。
③統合化について
地図を縮小するにつれて密集しているところが潰れてしまい、形状の判別がつかなくなります。また、地図上に記載された様々な区分が細かくなりすぎてしまいます。すると、その地図からの読図が困難となり、わかりずらく、地図閲覧に嫌気がさしてきます。
そのため、細かく分布しているものをまとめて見やすしなければなりません。土地利用や植生などまとめることにより、その地域の特徴が明確に表すことができます。
ただし、まとめてはいけないものもあります。たとえば、湖沼や島嶼などが密集しているからといって、一つにまとめてはいけません。まとめてしまうと形状が全く違う島や湖になってしまうからです。
④転位について
web地図やカーナビが普及し、地物の位置情報が重要視されています。しかし、縮尺が小さくなるにつれ、近い位置の地物は磁石のNとSのようにくっついていき、さらには重なってしまいます。するとどうでしょうか、くっつき合った地物がどちらなのか、わからなくなってしまいます。例えば、道路と鉄道が並走しています。小縮尺になると重なってしまい、道路と鉄道が重なってしまい、路面電車になってしまいます。
ではどうするか、磁石の同極同志のように離してしまいましょう。位置情報の観念からすると誤りなのでしょうが、編集図は見る人のための地図であり、見る人がわかりやすいようにすることが求められます。
⑤誇張について
実測図を作っている人たちからすると「編集図は地図ではない」と思われていることでしょう。社会科教育の中でも実測図は教わりますが、編集図については習うことは少ないかと。世の中でよく見る地図のほとんどが編集図にもかかわらず。なぜ編集図は地図学において疎外されているのかというと、私が思うのには、誇張が所以しているのではないかと。何しろ、科学的に測量をした成果を編集者の意思で勝手に改変してしまうのですから。「そんな嘘を描いちゃだめでしょ」となるわけですね。
でも、そんなことは百も承知の上で、伝えたいこと、知ってもらいたいことを表現しなければなりません。それこそが小縮尺の地図編集なのです。
さて、誇張ですが、例えば、沖ノ鳥島や竹島を小縮尺図では大きめに描きます。小さすぎて点にもならないのですが、日本にとっては重要な島です。見る人がわかりやすいように実際よりも大きく改変しなければなりません。そのほか、小縮尺では表現不可能な地形なども主題にする場合は、可視できるように表現します。アニメで、悪役たちがやたらと大きく描かれています。大きくすることで、恐怖感が増します。実際の人間の大きさではないですよね。それと同じことを場合によっては地図でも行うことがあります。誇張の大きさもその地図の利用法によって変わりますので、すべての編集図が誇張を乱発していいわけではありません。
2)地図デザイン
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